ブログ「ヒデヲの間」
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ウェイン・ショーター・カルテットを体感
2014年04月23日

先週、ウェイン・ショーター・カルテットを観てきた。
とんでもなく素晴らしいライブであった。

昨年も、ウェイン・ショーターを観た。
(昨年のレビューはコチラ→http://p.tl/jtvT
その時は、いつものカルテットのドラムだけが違うメンバーで。
それでも、とんでもなく素晴らしいライブではあったんだが。
これが、4人ともオリジナルのメンバーであったら、どんな凄いことが起きたいんだろうか、という思いはあった。

そして、今回。
ウェイン・ショーター・カルテットのメンバーが4人とも揃っての来日となった。
ウェイン・ショーター(サックス)
ダニロ・ペレス(ピアノ) ジョン・パティトゥッチ(ベース) ブライアン・ブレイド(ドラム)

もう10年以上同じ4人でライブをやり続けてる。
あ・うんの呼吸をも超えた、孤高の4人組だ。
して、その4人が揃うと、はたしてどんなスゴイことが起きてしまうのか。
期待に胸をふくらましていた。

さて。
実際に4人がステージに上がり、おごそかにライブがはじまると。
これが、4にともびっくりするくらいシンプルな音しか出さない。
そして、以前見たときより、格段に音数も少ない。

メンバー全員、そりゃもう手練ればかりであり。
やろうと思えば、テクニック的にも、もっともっと色んな事できるはず。
語彙力は沢山あり、難しい言葉も沢山知ってるはず。
でも、チョイスするのは、誰にでも分かるような自然で単純で分かりやすい音ばかり。

ただ。
そのシンプルな音の説得力が、半端ではない。
その物語に必要な音。
その時に一番必然な音。
それでいて。
決して過去の音を追わず、今まさに生まれる音をだす。
もっとも「今」な音を、至極同然のように、パッと音にするのだ。

今のウェインショーターのバンドは、この音以上の音はいらない。
必要のない音はない。
必然な音しかない。
それでいて、この先何が起きるかさっぱり読めぬ、緊張感。

まるで、子供が書いた絵。
子供が喋る言葉。子供が出す音。
そんな単純な音を奏でながら、4人は楽しんで物語を進めていく。

にもかかかわらず。
音に宿る生命力は凄まじく。
強く、優しく、優雅。
音が交わる迫力、躍動感。

ピーンと張りつめた緊張感と、無邪気さと、優しい包容力とか混在する独特の空気感の中。
その音で描かれた絵は、なんとも色鮮やかで、とてつもなく壮大であった。

そして。
ウェインは、最後の最後。
必然の先にある音を、体内からひりだす瞬間があった。
今描いてる絵の外にあるかのような音。
とても遠い音を出す。
なんて遥かな音をだすんだろか。

まるで、人物画の最後に、目を描くかのように。
その音で、一気に絵に生命が宿った。
今日という日の完結。
今日という日の完成だ。

なんだか、信じられない音楽を聴いた気がする。
こんな音楽が世の中に生まれるのだろうか。
教会にいるような、真っ白な気持ちになった。
ただ純粋に音につつまれ、あまりの美しさに涙した。

80歳にして、なお今を生きるウェイン・ショーター。
同じ時代に生まれ彼の生きる音を聴けること、なんとも贅沢で、なんて素晴らしいことであろうか。
まだ、これからもさらに素晴らしい音を出し続けて欲しい。

 

 

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